ジェルはドリンクと一緒に摂るもの【浸透圧と胃腸トラブルの関係】
- 治樹 片岡

- 2月17日
- 読了時間: 6分
ランナーの皆さん、ご苦労さまです。快腸走の片岡です。
今日は「ジェルはドリンクと一緒に摂らないと胃腸トラブルになるので、水やスポドリと一緒に摂った方が良い」という話をします。
なぜか。理由は2つです。
ジェルは高濃度・高浸透圧に設計されているため
高浸透圧の食べ物を一度に摂取すると、腹痛などの胃腸トラブルになりやすいため
これらを説明するためにまず初めに、浸透圧について。
浸透圧という概念は中学校の理科で習いますね。
おさらいのために簡単に言うとこうです。
“高濃度と低濃度2つの水溶液がある時、濃度を均一にしようと薄い側から濃い側へ液体が移動する力”
つまり水分というのは、常に濃い方へ引っ張られるということ。濃い側にどんどん水分が集まるというわけです。
身近な分かりやすい例で言うと、切り傷に海水が染みて痛いという現象。
これは血液よりも海水の方が濃度が高いので、切り傷から血液が体外に出てこようとするために傷口が焼けるように痛むことが起きています。
ちなみに私は一昨日、皿洗いの最中に擦り下ろし器のカッターで指をざっくり切ってしまいました。洗剤が傷口に染みて痛かったのですが、これは血液よりも洗剤の方の濃度が高いからです。
この浸透圧という力は人間の体のあらゆる器官の中で働いています。栄養素の吸収、水分の吸収、エネルギーの産生などなど。血液をはじめとしたすべて何らかの液体が身体中を循環しながら生きています。ちょっとした濃度の違う色々な液体が浸透圧の作用によって、身体中を流れ巡っているわけです。体の仕組みはこうした水分の微妙な濃度バランスで保たれています。
人間の体は60%が水分でできているのは、そのため。人間は水不足になると3日間しか生きられないということからも、いかに人間の体は水分によって支えられているか分かると思います。
では、「ジェルは高濃度・高浸透圧に設計されているため」という1つ目の理由について。
エネルギージェルと呼ばれる補給食は、おおよそこのような成分で構成されているでしょう。
■エネルギージェルの成分
糖質:25g(56%)
水:19g(42%)
食塩相当量やアミノ酸等:1g(2%)
合計:45g
つまりエネルギージェルとは科学的に言うと、糖質が水に溶けた水溶液に他なりません。要はブドウ糖水のようなものでして、その濃度は56%です。
実はこれ、人間の体にとって極めて高濃度。
先程申した通り、人間の体液は浸透圧を利用することで栄養の吸収などを行っています。我々ランナーはどうか。摂取したジェルは胃で消化された後に、小腸によってブドウ糖などのエネルギー源が吸収されます。つまり、小腸に入ってきたエネルギー源が血管内に移動することによって栄養素が吸収される。これがランナーがジェルを摂ってエネルギー補給する際に起きているメカニズムです。
そのため、小腸に入ってきた液体の浸透圧が体液と比べて極端に高いと、上手く血管内に液体が移動しなくなってしまいます。逆に体液と液体の浸透圧が均等であれば、液体は血管内へと移動しやすくなります。だからジェルの浸透圧が重要なのです。
体液の浸透圧と等しく、小腸から血管へとスムーズに体液が流れるブドウ糖液の適正濃度は5%。
点滴やスポーツドリンクはこのような濃度に近く設計されているため、体に吸収されやすくできているのです。
それに対して一般的なジェルの濃度は56%ということなので、いかに高濃度・高浸透圧に設計されているかお分かりいただけたと思います。
ちなみに、「重量の割にカロリーが沢山摂れるジェル」を好んで選んでいるランナーは注意です。重量あたりのカロリーが多いということは、それだけ成分がギュッと詰め込まれて高濃度・高浸透圧ということを意味します。
続いて2つ目の理由、「高浸透圧の食べ物を一度に摂取すると、腹痛などの胃腸トラブルになりやすいため」について。
ジェルを飲み込んだとしても、それがエネルギーとして吸収されるかどうかは別の問題です。しかも、ランナーにとってはスムーズに吸収されるかどうかも大事です。
これがもし、きちんと血管内に吸収されないとどうなるか。
未吸収のジェルの成分が小腸の中にとどまり、今度はその成分が血管内の水分を逆に引き込むということが起きてしまいます。すると小腸内は未吸収成分と水分だらけ。そうした諸々の産物は、いずれ大腸へ一気に流れ込みます。これが下痢です。
それだけではありません。腹痛や吐き気など他の胃腸トラブルの症状もこれと同じメカニズムによって生じています。
ではどうやったら胃腸トラブルなくスムーズにジェルでエネルギー吸収ができるのかというと、水分と一緒にジェルを摂るということです。
ジェルを水分と一緒に体に入れることによって、胃腸内に到達したジェル+水分の濃度・浸透圧を結果的に下げる。
こうすることで、胃腸トラブルのリスクも下げつつ、エネルギー吸収率を高めることができます。
なのでエリートランナーはジェルからではなく、糖質入りのドリンクからエネルギー吸収しているのです。吸収されやすい濃度でエネルギー補給しており合理的です。
とはいえ、マラソン大会中にスペシャルドリンクを置けない私のような一般市民ランナーはどうすればよいのか。エイドの水やスポーツドリンクを利用するしかありません。
私がマラソン中にジェルを摂る時は、エイドが見えてきたら手前でジェルを摂って、エイドのスポーツドリンクを飲んでいます。とはいえ、マラソン中に飲めるスポーツドリンクなんてほんのわずかなので、ジェルを体液に完全に近い浸透圧まで下げることはできませんが良しとしています。
トレランレースであれば、私はジェル摂取後に必ずフラスクの水分を飲むようにしています。フラスクの中身はエネルギー吸収しやすい濃度に調整されたスポーツドリンクにしているので効率的です。
マラソンにせよトレランにせよ、一番おすすめしないのがジェルだけで水分補給を済ませようとすることです。
しかしこういう大事なことをなぜ、どこのジェルメーカーもランニングインフルエンサーも誰一人言わないんでしょうね。私はどんどんランナーの皆さんにお伝えして、正しい知識を広めていきたいと思います。全ランナーの胃腸トラブルを解決することを目指して!
以上、今回は「ジェルは水分と一緒に摂ったほうが良い」という話でした。
株式会社快腸走
代表取締役社長
片岡治樹

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