【ハセツネ直前】最低気温4℃の夜、エイドのない山で胃腸を冷やさないために

こんにちは。株式会社快腸走、社長の片岡です。
今週末の10月11日(日)13:00、いよいよ第34回ハセツネCUPがスタートします。出場される皆さん、準備は進んでいますか?
天気予報を見ていると、今のところ当日は晴れ。麓の奥多摩町でも最高気温は25℃前後まで上がりそうです。一方で、夜の最低気温は麓で11℃前後。標高1,500mを超える三頭山のあたりでは、4℃前後まで下がる見込みです。
昼は暑くて、夜は冬のように寒い。
しかもハセツネは13:00スタートなので、気温が一番高い時間帯に走り出して、たっぷり汗をかいた状態で夜の稜線に入っていくことになります。
私は、今年のハセツネで胃腸トラブルを分けるのは、この「汗をかいた後の冷え」だと考えています。
今日は、寒いとなぜ胃腸トラブルが起きるのかという仕組みと、エイドのないハセツネで胃腸を冷やさないための方法をお伝えします。
ハセツネに出ない方も、これから気温が下がっていく秋冬のトレイルやマラソンで使える内容ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
なぜ寒いと胃腸トラブルが起きるのか
「お腹が冷えると調子が悪くなる」というのは、多くの方が感覚的にご存じだと思います。では、身体の中では何が起きているのでしょうか。
私は、ランナーの胃腸トラブルの最も大きな要因は「小腸の血流不足」だと考えています。寒さの話も、ここから説明すると分かりやすいです。
そもそも、走っているだけで小腸の血流は減っている
小腸には、大きく分けて三つの働きがあります。
糖質や水分、ミネラルを取り込む「吸収機能」
有害な物質が身体の内側へ入り込むのを防ぐ「バリア機能」
胃や大腸と連携して、胃腸全体の動きを調整する「司令機能」
ところが走っている間は、脚などの筋肉へ優先的に血液が送られます。その分、胃腸に回る血液は後回しです。
以前のメルマガでもご紹介した2001年の研究では、最大酸素摂取量の70%の強度で60分運動すると、胃腸から肝臓へ向かう門脈の血流量が、1分あたり約0.63リットルから約0.13リットルまで低下したと報告されています。減少率にすると約80%です。
つまり、寒さが加わる前から、小腸はかなり少ない血流で余裕なく働いているということです。
そこに寒さが重なるとどうなるか
身体が冷えてくると、人間は体温を守るために皮膚の血管を縮めて、血液を身体の中心に集めようとします。
「それなら胃腸にも血液が回るのでは?」と思うかもしれません。でも、走っている最中はそうなりません。集まった血液は、動かし続けている筋肉と、熱を作るための働きに優先して使われます。結局、小腸は後回しのままです。
さらにハセツネで厳しいのが、汗で濡れたウェアです。濡れたシャツがお腹に張り付いたまま稜線で風を受けると、お腹の表面から直接熱が奪われていきます。
血流がさらに足りなくなった小腸では、次のようなことが起きやすくなると考えています。
吸収が遅れて、ジェルや水が胃に溜まる。チャポチャポしたり、気持ち悪くなったりする。
吸収しきれなかった糖質が大腸まで流れて、お腹の張りや下痢につながる。
胃腸全体の連携が乱れて、急に補給を受け付けなくなる。
吐き気は胃、下痢は大腸の問題に見えますが、元をたどると小腸が働けなくなっていることが始まりになっている場合があります。
「寒くない」と感じていても、冷えていることがある
もう一つ知っておいていただきたいのが、走っていると寒さを感じにくいということです。
新潟医療福祉大学の藤本知臣先生らの研究では、運動中の「暖かい・寒い」という感覚だけでは、身体の冷えを捉えきれない場合があることが示されています。
「まだ寒くないから大丈夫」と思っているうちに、お腹はもう冷えている。気づいた時にはジェルが入らない。これが一番避けたいパターンです。
冷えと補給停止の負のスパイラル
身体は、熱を作るためにもエネルギーを使います。そのエネルギー源の一つが糖質です。
冷えて胃腸が受け付けなくなる。食べられないので熱を作れない。さらに冷えて、ペースが落ちる。ペースが落ちると、もっと冷える。
一度この流れに入ると、立て直すのがとても難しくなります。だからこそ、胃腸の調子を崩す前に手を打っておきたいのです。
ハセツネは「冷えてから温め直す」ことが難しい
先月の信越五岳の時には、冷えへの対策として「エイドで温かい飲み物を摂る」「ドロップバッグで乾いた衣類に着替える」という方法をご紹介しました。
でも、ハセツネではこれが使えません。
ハセツネは71.5kmを24時間以内に、自分で背負った水と食料で進むレースです。主催者から補給を受けられるのは、第2関門の月夜見第二駐車場での水またはスポーツドリンク1.5リットル以内だけ。温かいスープも、おかゆも、着替えを預けたドロップバッグもありません。
つまり、一度冷えて胃腸の調子を崩してしまうと、外から温めてもらう手段がほとんどないということです。
しかも、多くの方がコース最高地点の三頭山(標高約1,500m)を通過するのは夜です。スタートから数時間、暑い中で汗をかいて、日が落ちて気温が下がり、疲れてペースも落ちてきた頃に一番寒い場所へ入っていく。
だからハセツネでは、「冷えたら対処する」ではなく「冷える前に防ぐ」。そして、必要なものは全て自分のザックに入れておく。この二つが基本になると私は考えています。
エイドのない山で胃腸を冷やさないための6つの方法
ここからは、私ならこうするという具体的な方法をお伝えします。
1. 序盤の汗を減らす
夜の冷え対策は、実はスタート直後から始まっています。
序盤にペースを上げすぎると、胃腸への血流が減るだけでなく、ウェアが汗でびっしょり濡れます。その濡れが、数時間後にお腹を冷やす原因になります。
「走れるペース」と「食べながら走り続けられるペース」は、必ずしも同じではありません。暑い時間帯こそ抑えて入ることが、夜の胃腸を守ることにつながると思います。
2. 濡れたウェアをお腹に張り付かせない
私はウェアの一番下に、ミレーの「ドライナミック メッシュ」という網状のドライウェアを着ています。汗で濡れたシャツが、お腹に直接張り付くのを防ぐためです。
さらに、お腹の皮膚にワセリンを塗っておくと、水分が直接皮膚に触れ続けるのを抑えられます。腹巻きを使うのも一つの方法です。
3. 寒いと感じる前に着る
先ほどお伝えした通り、走っている時の「まだ寒くない」は当てになりません。
ですので、着るタイミングは感覚ではなく、場所と時間で決めておくのがおすすめです。
日が落ちてヘッドライトを点けるタイミングで、ウィンドシェルを羽織る。
三頭山への登りに入る前など、風に当たる稜線の手前で着ておく。
ウェアと手袋は、ザックを下ろさずに取り出せる場所に入れておく。
冷えてからザックを開けるのではなく、冷える前に着ておく。これだけでも結果が変わると思います。
4. 冷たい水を一気に飲まない
気温4℃の中では、背負っている水も冷たくなります。エイドがあれば温かい飲み物でお腹を温められますが、ハセツネではそれができません。
そこで、次のような工夫をおすすめします。
水は一度にガブ飲みせず、一口ずつこまめに飲む。
口に含んで少し温めてから飲み込む。
フラスクはザックの胸元など、体温が伝わる位置に入れておく。
荷物に余裕があれば、小さな保温ボトルにお湯を入れて持っていく。
保温ボトルは重さとの相談になりますが、夜中に温かいものを一口飲めるというのは、エイドのないレースでは心強いと思います。
5. 補給は少量をこまめに、水と一緒に
血流が少なくなっている小腸に、一度にたくさんの補給を流し込むと処理が追いつきません。
例えば1時間に糖質30gを摂るなら、1時間に1回まとめて摂るより、20分に1回10gずつ摂る方が、小腸への負担は小さくなります。ジェルは水と一緒に摂ることも大切です。
そして寒い夜は、手がかじかんで補給そのものが面倒になります。手袋をしたまま取り出して飲めるかどうか、家で一度試しておいてください。
もし「気持ち悪いかも」と思ったら、無理に詰め込まないこと。ペースを落として、一枚着て、胃腸が落ち着いてから少量ずつ再開する方が立て直しやすいです。
6. 長く立ち止まらない
走っている間は筋肉が熱を作ってくれています。ところが足を止めた途端、熱を作る量が減って、濡れたウェアに一気に熱を奪われます。
月夜見で水を受け取る時や、関門で一息つく時は、まず一枚羽織ってから作業する。やることを予め決めておいて、5分以内を目安に動き出す。
着る、濡らさない、冷たいものを一気に入れない、止まりすぎない。どれも地味ですが、この積み重ねが小腸への血流を守ることにつながると私は考えています。
それでも、小腸の血流低下はゼロにはできない
ここまで、胃腸を冷やさないための方法をお伝えしてきました。
ただ、正直にお伝えすると、どれだけ対策をしても、走っている以上は小腸の血流低下そのものをゼロにすることはできません。24時間近く動き続けるハセツネのようなレースであれば、なおさらです。
だから私は、身体の外側からの冷え対策に加えて、補給食の側でも二つのことをしておきたいと考えました。
血流が少ない状態の小腸でも処理しやすいように、補給の負担を小さくすること。
余裕なく働いている小腸そのものを、栄養の面から下支えすること。
その考えで開発したのが、ウルトラエネルギージェル「RELOAD」です。
L-グルタミンを1袋に6.5g配合している理由
L-グルタミンは、小腸の粘膜細胞が主要なエネルギー源として利用するアミノ酸です。
血流が減って、届く酸素や栄養が少なくなっている小腸に、小腸自身が使えるエネルギー源を補給と一緒に届けたい。私がRELOADにL-グルタミンを入れたのは、そういう理由からです。
そして、こだわったのは量です。
L-グルタミンが入っているジェルでも、ごく少量しか配合されていないものが少なくありません。RELOADは、研究で機能が報告されている水準を意識して、1袋に6.5gを配合しました。
名前だけの配合ではなく、意味のある量を入れる。これがRELOADの考え方です。
もちろん、RELOADを飲めば胃腸トラブルが起きないということではありません。ペースや冷えへの対策があってこそです。その上で、厳しい条件で働く小腸を補給の面から支える備えとして、お役に立てると私は考えています。
小腸の負担を小さくするための設計
L-グルタミン以外の部分も、今日お話しした「血流が少ない小腸」を前提に設計しています。
1袋100gに糖質約60g、約270kcal。
マルトデキストリン40gと果糖20gを、2:1で組み合わせた混合糖質。吸収のルートを分けて、小腸の負担を分散させる狙いです。
キャップ付きのパウチなので、一度で飲み切らず、少量ずつ分けて飲めます。
エイドのないハセツネでは、補給は全て自分で背負うことになります。私が基準にしているのは、まずは1時間に糖質30g、つまりRELOADを半量です。これを2〜3回に分けて、水と一緒に摂ります。
RELOADの準備個数 = 想定行動時間 ÷ 2 + 予備2個
例えば16時間でのフィニッシュを想定するなら、16 ÷ 2 + 2 = 10個という計算です。寒さでペースが落ちて行動時間が延びることもありますので、予備は必ず持っておきたいです。
もちろん、必要な量は人によって違います。他の行動食も合わせて、ご自身が練習で確認してきた量をもとに考えてください。
長い夜には、「しそジュース味」も
長い時間、同じ味のジェルを摂り続けていると、甘さが辛くなってくることがあります。胃腸は元気なのに、味に飽きて補給が止まってしまうのはもったいないです。
そこで用意しているのが「RELOAD しそジュース味」です。
信越五岳の私設エイド「宴会隊エイド」で、高島由佳子さんとお母様が毎年手作りされてきたしそジュース。その味をもとに、妙高で手摘みした赤じその抽出液を通常版のRELOADに加えました。梅干しのような酸味と甘み、ほんのりとした塩味があります。
L-グルタミンをはじめ、胃腸トラブル対策の基本設計とエネルギー量は通常版と変わりません。
私のおすすめは、通常版をベースにして、甘いジェルが辛くなってくる夜間やレース後半にしそジュース味へ切り替える使い方です。味の選択肢を予め用意しておくことも、最後まで補給を続けるための準備だと思います。

▼RELOAD 通常版(5個セット 7,980円・税込)

▼RELOAD しそジュース味(1個 1,760円・税込)
▼RELOADの成分や開発の考え方はこちら
最後に
ハセツネは、エイドに頼らず、自分で背負ったものと自分の判断で夜の山を越えていくレースです。だからこそ、スタート前の準備がそのまま結果につながると思います。
ザックにウェアと補給を入れたら、手袋をしたまま取り出せるか、一度試してみてください。それだけでも、夜の稜線での余裕が変わるはずです。
何カ月もかけて積み重ねてきた練習を、胃腸トラブルで終わらせてほしくない。出場される皆さんが、最後まで補給を続けて五日市のフィニッシュに戻ってこられることを、妙高から応援しています。
株式会社快腸走
代表取締役社長
片岡治樹


コメント