ロングレース中にジェルが受け付けなくなる原因

こんにちは!
株式会社快腸走、社長の片岡です。
昨日は、信越五岳100mileに向けた練習として「志賀高原100」の40km部門を走ってきました。
レースは終始雨。コースは泥で滑りやすく水たまりも多く、思うように走れない状況でした。
思い返せば、昨年信越五岳110kmを走った時も同じような雨シチュエーションでした。昨日の志賀高原はまさに去年の信越五岳と状況が酷似していて、苦戦した思い出がフラッシュバックされました。
とはいえ考え方を変えれば、信越五岳の本番が雨になった場合を想定したとても良い練習になったと思います。
雨や水たまり、泥濘に怯まないメンタル。
泥でズルズル滑って走れない上り坂では、走ることに固執せず、潔く歩く。押し引きの大切さを学ぶことができました。
そして、チーム快腸走の相方である藤井さんは、20km部門で総合4位に入賞。怪我明けのレースでしたが、RELOADを2袋使い、2時間切りを達成しました。
1時間あたり約60gの糖質を補給しながら、
「飲みやすく、胃腸トラブルもなく、高い出力を最後まで維持できた」
とのことです。
藤井さんのターゲットレースは、9月20日に開催されるGTWS MYOKO TRAILの23.5km。そこでの活躍にも期待したいと思います。
■なぜ、レース後半にジェルが受け付けられなくなるのか
今年のUTMB Mont-Blancも、すべてのレースが終了しました。参加された皆様、本当にお疲れ様でした。
UTMBを走ったランナーの発信を見ていると、
「途中からジェルが入らなくなった」
という声がいくつかありました。
UTMBに限らず昨日の志賀高原でもロングレースではよくある胃腸トラブルの一つです。
なぜ、レース前半には飲めていたジェルが、後半になると急に受け付けられなくなるのでしょうか。
私は、その原因を大きく2つに分けて考えています。
一つは、ジェル側の問題。
もう一つは、ランナー側の問題です。
■ジェル側の問題① 高すぎる浸透圧
まず考えられるのが、ジェルの濃度です。
ジェルには糖質だけでなく、アミノ酸、塩分、その他のミネラルなど、さまざまな成分が含まれています。
限られた容量の中に多くの成分を詰め込むほど、濃度や浸透圧は高くなりやすくなります。
ここで重要なのが、運動中は胃腸の働きが平常時より低下しやすいということです。
運動強度が上がると、血液は走るために使われる筋肉へ優先的に送られ、胃腸を含む腹部の臓器に回る血流は減少します。
その状態で高浸透圧ジェルを一度に摂取すると、胃から先へ内容物が送られにくくなったり、小腸で水分や糖質を吸収しにくくなったりする可能性があります。
ジェルを口に入れたことと、その糖質が身体に吸収されているとは限りません。
消化吸収が追いつかず、胃の中に内容物が溜まり始めると、
・走るたびに胃がチャポチャポする
・胃が詰まったように感じる
・次の補給を口に入れられない
・吐き気がする
といった状態につながります。
快腸走のRELOADでは、低浸透圧な「マルトデキストリン」と「フルクトース」という2種類の糖質を合計60g配合しました。さらにこれらは小腸の別々の経路で吸収される性質があるため、2:1で組み合わせることにより効率よく吸収されることを狙っています。
さらに、キャップ付きのパウチにすることで一度に飲み切るのではなく、少量ずつこまめに補給できるように設計しました。胃腸の中でジェルの浸透圧が高くなってしまうことを避けるためです。
■ジェル側の問題② 甘味が強すぎる
もう一つ考えられるのが、甘味の強さです。
多くの既存のエネルギージェルには、スクラロースやアセスルファムKといった高甘味度の人口甘味料が使われている商品があります。
スクラロースは砂糖の約600倍。
アセスルファムKは砂糖の約200倍の甘味を持ちます。
ちなみに、これらはカロリーとして身体に吸収されない甘味成分でして、ゼロカロリーコーラのようないわゆる糖質ゼロ・ゼロカロリー食品でよく使われる成分です。無糖なはずなのに味は甘いゼロカロリーが謳われる食品に重宝される便利な代物であります。
ジェルにこういった人工甘味料が使われるのは、おそらく食品業界の慣習上「味の印象にインパクトを持たせて商品を記憶してもらうため」と推察しています。ファストフード業界やスナック菓子業界が「誰にでも分かりやすくい濃い味を演出する」ことで顧客を引きつける策と同じかと。
カロリーにもならず、必要以上に甘い成分はランナーにとって無益ではないでしょうか。私が快腸走を始める前、胃腸トラブルに悩みながら色々なジェルを試している時、そこに強い違和感がありました。だから快腸走を作ったわけです。
話が逸れました。
甘味や香り、後味の強いジェルを何時間も繰り返し摂り続けると、最初は刺激的だったその味をおいしいと感じにくくなり、次第に口に入れたくなくなることがあります。
同じ食べ物や同じ味を繰り返し摂ることで、その味に対するおいしさや食べたい気持ちが低下する。
一般に「味覚疲労」と呼ばれる状態です。
ただでさえ疲労し、胃腸の働きも弱くなっているレース後半。そこで甘ったるく、ドロッとしたジェルを口に入れると、気持ち悪くなってしまう。
これも、ジェルが受け付けられなくなる理由の一つだと思います。
■ランナー側に考えられる3つの原因
一方で、ジェル側だけでなく、ランナー側の状態が原因になっていることもあります。
一つ目は、オーバーペースです。
ペースを上げるほど筋肉への血流が優先され、胃腸に回る血流は少なくなりやすくなります。
胃が詰まり始めた、補給が入りにくいと感じたら、早い段階でペースを落とす。
上り坂を歩く。
エイドで一度休憩する。
私の場合、100mileで胃腸に違和感が出たら、心拍数を一度130弱まで落とすことも考えています。
“少しでも食べられるうちに沢山食べておこう”と補給を無理やり押し込む前に、胃腸に違和感が出そうになったらまず胃腸が働ける強度まで戻す。この初動を間違えないことが重要だと思います。
二つ目は、水分不足です。
脱水に近づくと、循環する血液量が減り、胃腸への血流不足や胃排出の遅れをさらに悪化させる可能性があります。
ジェルだけを摂り続けるのではなく、水分も合わせて計画的に摂る必要があります。
そして三つ目が、同じ味を摂り続けることです。
先ほどの味覚疲労の話なのですが、これに対してランナー側ができる対策は、単純です。
最初から複数の味を用意しておくこと。
一つの味だけを延々と摂り続けず、交互に使う。飽きる前に別の味へ切り替える。味覚疲労が起きてから対処するのではなく、味覚疲労が起きにくい補給戦略を、レース前から作っておくということです。
余談ですが、信越五岳レースディレクターの石川弘樹さんは「補給が摂れなくなった時に自分が摂れるものをドロップバッグに用意しておく」ことが重要だとよくおっしゃっていました。石川さんの場合は、それが豚骨スープとミルクティーだそうです。
同じ味に飽きてきたら「これなら自分は大丈夫!」という慣れ親しんだ好みの味で味覚をリセットするという技なんだと私は思っていて、大変勉強になっております。
■しそジュース味は、味覚疲労を防ぐために作りました
実は私は、RELOADを作る前から、
「将来的には、必ず複数の味を作るべきだ」
と考えていました。
商品ラインナップを増やしたかったからではありません。新しい味を出して、話題を作りたかったからでもありません。
100kmや100mileなどロングレースで最後まで補給を続けるには、一つの味だけでは足りないと考えていたからです。
味のバリエーションは、単なる“楽しさ”ではありません。最後まで必要な糖質を摂り続けるための、補給戦略の一部と考えています。
通常版RELOADは、ほどよい甘味と酸味で、長時間でも淡々と摂りやすい味。
しそジュース味は、梅干しのような濃い酸味に、糖質の甘味とほのかな塩味が加わった、通常版とはまったく違う味です。
通常版を飲んだ次は、しそジュース味。しそジュース味の次は、また通常版。
このように交互に使えば、口の中の印象を大きく変えながら補給を続けられます。
もちろん、前半は通常版を中心に使い、甘い補給がつらくなり始める中盤以降にしそジュース味へ切り替える方法でも良いと考えています。
■おすすめは通常版としそジュース味の2種類持ち
すでに通常版RELOADをお持ちの方は、味覚疲労対策として、是非しそジュース味を追加されることを検討してみてください。
まだRELOADをお持ちでない方は、通常版としそジュース味を両方用意し、事前のロング走で交互に試してみてください。
先日販売を開始したRELOAD しそジュース味は信越五岳シーズン限定、1,000個だけの製造です。
原料の赤じそは8月のみ収穫できる季節モノですので、今シーズンの追加製造はありません。
販売開始から既に10数個のバルク買いをされるお客様が相次いでいますが、欲しいと思った時に売り切れている可能性があります。レースで使いたい方は、お早めにご購入いただければと思います。


レース後半に補給を受け付けなくなってから、もっと違う味を持ってくればよかったと後悔するのは虚しくありませんか。
何を摂るかだけでなく、どうすれば最後まで摂り続けられるか。
通常版としそジュース味を組み合わせ、味覚疲労まで見越した補給戦略を作っていただけたらと思います。
UTMBに挑戦された日本人選手の皆様の奮闘ぶりを見て改めて思いました。私にはまだ手が届かないUTMBです。だからこそ自分が成し遂げられないことへの挑戦を心からリスペクトしているのですが、「走力は足りているのに、補給が入らずDNF」という終わり方に悲しさを感じずにはいられません。
胃腸トラブルで無念なDNFを避けていただくためにも、この情報がもっと多くの日本のトレイルランナーに広がることを願っています。
株式会社快腸走代表取締役社長
片岡治樹




コメント